商談をスムーズに!ビジネスで中国人と接する上でのマナーと注意点
2020-07-16 中国のビジネスや文化・マナー

中国語学習コーチ
深谷 百合子
中国のお客様や取引先と初めての商談。ちょっと緊張しますよね。
中国人は面子を重んじると言うし、ビジネスマナーも日本と少し違うらしい。
かといって、細かいことを気にしすぎるあまり、商談に集中できないのも困ります。
「こんな時はこうする」というマニュアル通りに事が運ぶとは限りませんし、せっかく顔を合わせるのだから、やはり心の通う場にしたいものです。
私も中国で仕事をしていた頃は、行政や取引先との会議や会食に出席することがしばしばありました。中国人の上司や同僚がどのように振る舞っているのかを観察しながら、マナー違反にならないための「外せないポイント」というのが段々分かってきました。
そこでこの記事では、私が実際に見たり経験したりした実例を紹介しながら、最低限気をつけるべきポイントをおさえ、形式ばかりにとらわれず、お互いに気持ちよく交流ができるヒントをお届けします。
目次
ビジネスマナーの根本は「相手を尊重すること」
初対面の相手と会う時には、挨拶をして、名刺交換をする等、基本は日本と同じです。「あなたとお会いできて嬉しいです」という気持ちをもって、明るい笑顔とハキハキした挨拶をすると好感を持たれます。
紹介の順番は……、席順は……、等と細かいことを覚えていっても、緊張して忘れてしまったり、その場の状況でマニュアル通りにいかないことも多々あります。
気を使ってオドオドしてしまうより、同行している中国人同僚や部下、通訳、あるいは客先の中国人に従い、明るく堂々と振る舞う方が印象が良いものです。
マナーは形式ではなく、「相手を尊重する気持ち」です。相手の好意は素直に受け取ること、相手に恥をかかせないこと、自分と異なる意見であっても、相手の言い分をしっかり聞くことを心がけていれば、信頼関係を築いていくことができるでしょう。
一点だけ注意したいのは、「見た目」で判断しないようにすることです。
日本では役職の高い女性と出会う機会は少ないですが、中国では部長、経営幹部クラスの女性は大勢います。また、男女問わず、30代の若い経営幹部も大勢います。
以前、商談に来た日本メーカーの営業マンが、客先である女性部長ではなく、彼女の隣に居た年配の男性通訳のことを部長だと勘違いして、先に彼に名刺を差し出そうとしたのを見たことがあります。先入観で判断しないように注意しましょう。
アポイントをとる時の注意点
先すぎるアポイントはとらない
「あの人は忙しい人だから、前もってアポイントをとっておこう」と日本人なら思うものですが、中国では何日も先の約束をすると、忘れられてしまうことがあります。約束した日が近くなったら、念押しの連絡をするのが賢明です。
また、約束していたのにドタキャン、あるいは長時間待たされる……といったことも、よく起こります。
日本人は「順番」を重視しますが、中国人は「状況」を重視する傾向があります。予定がかち合った時も、順番よりも重要度等の状況で判断します。従って、「約束を守ってくれなかった」と腹を立てるよりも、こちらから別の日程を提案するなど、柔軟に対応できるように準備しておきましょう。
昼前後の時間帯は注意が必要
時間帯にも注意が必要です。
日本では、会議が少し延びてお昼の休憩に食い込んでしまっても、キリのいい所まで進める場合が多いですが、中国では食事の時間はとても大切に考えられています。
昼食後、昼寝をする習慣もあるので、11時半から13時半の時間帯は避けましょう。私が居た会社でも、「昼一番の会議」と言えば、たいてい14時からでした。
午前中の会議が長くなりそうなら、11時半頃に一旦区切り、「残りは午後から」とすると、喜ばれます。もちろん、中国人の方から、「あと少しだから、済ませてから食事にしましょう」と言われることもあります。その場合は素直に従えば問題ありません。
ちょっとビックリ! でも気を悪くしないで
会議中、日本人だとちょっとビックリしてしまうような光景に出くわすことがあります。例えば、出欠を記入する用紙を回す時。向かい側にいる中国人が机の上にある紙やペンを、シューッとエアホッケーのごとく自分に向けて滑らせてくることがあります。
また、タバコを差し出しながら、「吸いますか?」と顎で合図してくることもあります。そして、相手も喫煙者とわかると、タバコを2本くらい投げてよこしたりします。
日本人からすると、物を投げてよこしたり、顎で合図をするなんて、横柄な印象を受けてしまいますが、彼らには全く悪気はありません。むしろタバコなどは親切のつもりです。
「失礼だな」と思ってしまいがちですが、それ位気を許してくれたのだと受け止めましょう。もちろん、自分から相手に物を渡す時には、彼らの真似をする必要はありません。日本人らしい丁寧さも忘れずにいたいものです。
会食時のマナー
ここでは、招待された側として気をつけた方が良いことについて、ご紹介します。
喜んで招待を受ける
会食はお互いの親交を深める良い機会です。準備してくれた相手の気持ちに感謝して、喜んで招待を受けるのがマナーです。
「今晩、会食です」と突然誘われることが多いので、他の用事とかち合ってしまう場合もありますが、どうしても外せない重要な用事でない限り、会食を優先するのが無難です。
会場への到着は早すぎず遅すぎず
ホストより先に着くのも、待たせすぎるのもマナー違反。これは日本でも同じですよね。
気を付けたいのは、あなたが自分より上の職位にある中国人と一緒に招かれた時です。一緒に会場に向かうのであれば問題ありませんが、別々に行く場合は、上司より先に会場に着くようにしましょう。
席順
自分はどの席に座ればよいのか、なかなかわからないものです。
ほとんどの場合、ホストあるいは一緒に参加している中国人が、「こちらに」と指示してくれますので、それに従いましょう。
お酒と食事のマナー
お酒や食事のマナーは、参考になる情報が沢山出ていますので、詳細はそちらに譲りますが、根底にある基本的な考え方は「相手に敬意を表し、場を楽しむこと」だと思います。
私が中国人の上司、部下と一緒に取引先が主催した会食に出席した時のことです。最初の乾杯が終わってしばらくした頃、部下の一人がグラスを持って上司の所へ乾杯をしにやってきました。すると上司は、「あなたは自分を招いてくれたホスト一人一人と乾杯をすませてから、私の所に来るべきでしょう」とその部下を叱ったのです。
もしあなたが上司の立場で、部下が自分の所に来たら、「ホストの皆さんとは、もう乾杯したの?」と聞くようにしてみるといいですね。きっと「できる人」と思われます。
会食の席で特に気をつけたいのは、お酒を一人で飲んでしまうこと。言葉の問題もあって、つい一人で黙々と食べて、日本に居る時のように、ちびちびとお酒を飲んでしまいがちです。でも、中国ではお酒は「誰かと一緒に飲む」のがマナー。たとえ言葉が通じなくても、相手との交流を楽しむことが大切です。
通訳に感謝の言葉を
私たち日本人が単身で中国人と商談や会食をすることは、滅多にないと思います。自社あるいは相手先に、日本語ができる中国人が居て、通訳をしてくれることが多いことでしょう。
会議の時には、日本語と中国語と、人の二倍、話をしなければなりません。水やお茶など、気を使ってあげると喜ばれます。
また、会食でも通訳をしなければならないので、酔っ払ってしまわないようにお酒の量に気をつけていたり、話すばかりでなかなか食事に手をつけられない場合もあるでしょう。
皆が楽しく会食をしている間も、通訳の仕事をしてくれているのです。
「ちゃんと食べてる?」、「今日は助かりました。ありがとう」等、通訳への感謝の気持ちをしっかりと伝えることもお忘れなく。
いかがでしたでしょうか?
ビジネスマナーといっても難しいことではないんだな、相手を尊重すればいいことなんだなと思って頂ければ幸いです。

深谷 百合子(中国語学習コーチ)

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