ビジネスで求められる中国語のレベルってどれくらい?
2021-04-05 中国語学習法

中国語学習コーチ
深谷 百合子
お仕事で中国語に触れる機会が多いと、自分も仕事で中国語を使えるようになれるといいなぁと思うことありませんか?
私も中国で仕事をするようになってから、事ある毎にそう思っていました。会議に出てもチンプンカンプン。
通訳する時間を考慮してくれているならともかく、そうじゃない場合が多かったので、通訳する側も大変。
要点をかいつまんで伝えてくれますが、どうしても情報量が少なくなってしまうので、ちょっと心配になります。
また、こちらからほんのささいなこと、例えば会議の日程を相談したいというようなことでも、その場に通訳が居ないと、伝えたいことも伝えられず仕事が全然進まない。
もう少し自分でも中国語ができたら、もっと仕事が効率アップするのに……。
そんなビジネスシーンで、どれ位の中国語レベルであれば少ないストレスでスムーズに仕事を進められるのでしょうか。
今回は私が現地で実際にたどってきた道をご紹介しながら、中国語を活かして仕事を効率良く進めるための3つのコツについてお伝えします。
目次
自分の仕事に関連する言葉を覚えよう
「ビジネスで求められる」と言っても、その内容は様々です。
例えば中国赴任の要件として何らかの基準が設けられているとか、現地企業に就職する際に「HSK○級以上相当」等の条件が示されている場合もあるでしょう。
ひとつ例をあげるとすれば、「外国人就業許可申請」における基準です。この外国人就業許可申請では、基準に対する得点によって、
A類(ハイエンド人材:85点以上)
B類(専門家人材:60点以上85点未満)
C類(その他外国人材:60点未満)
に分類され、優遇や制限を受ける制度になっています。その中に「中国語能力」という項目があります。
ポイント項目 | 基準 | 得点 |
---|---|---|
中国語能力 | 以前に中国籍を有していたことのある外国人 | 5 |
中国語教育による学士以上の学位を取得している | 5 | |
HSK5級以上 | 5 | |
HSK4級 | 4 | |
HSK3級 | 3 | |
HSK2級 | 2 | |
HSK1級 | 1 |
中国語能力に関する項目は5点満点ですが、HSK5級以上を取得していれば5点付きます。つまり、HSKに関して言えば5級以上であれば通用するとみなされているとも言えます。
ただ実際のところ、仕事も千差万別。通訳に頼らず、100%自分で伝えなければならない仕事もあれば、全く中国語ができなくても仕事を進められる場合もあるでしょう。
つまり、大事なのは「自分が求める中国語のレベルがどれくらいなのか」ということです。
目的を具体的に設定する
通訳無しで商談に臨み、居並ぶ中国人を前に堂々とプレゼンする……。そんな姿、憧れますよね。
でも、ぼんやり描いているだけでは何をしてよいか分かりません。
どんな商談で、どれ位の人数の会議で、何をどうプレゼンするのか、可能な限り具体的に設定してみましょう。
資料にはどんなことを書きますか? そこに書く単語はどんな単語ですか?
中国語で説明するなら、正しい読み方も知っておく必要がありますよね。
あるいは、「資料を読むのに辞書を引き引き3時間。これを何とかしたい!」という方もいらっしゃるでしょうし、「ちょっとした指示を中国語で出せるようになりたい」という方もいらっしゃるでしょう。
まずは自分がどのレベルに達したいのかを設定し、そのために必要なことは何か? を遡って、ゴールまでの具体的なステップを作っていくと良いと思います。
自分に必要な単語を覚える
ビジネスで使う言葉というのは、範囲が限られているので、実はあまり多くありません。
会社やその業種、業界で使われている言葉や専門用語を覚えれば、大体の意味は分かるようになります。
会社であれば、まず人の名前、部署名、よく打合せをする取引先の名前等から覚えていくだけでも、「あぁ、今あの会社のことを話しているな」と推測することができます。
次に、自分の仕事でよく使う専門用語や業界用語も覚えやすいと思います。
私の場合は、「氨气(アンモニアガス)」、「氯气(塩素ガス)」、「风管(ダクト)」等といった用語を覚えてきました。
大抵こうした用語は頻出するので、覚えやすいですし、話しているのを聞いていても、その単語だけはハッキリと聞き取れるようになります。
ビジネスシーンでの会話集で勉強するのもいいですが、自分が遭遇するシーンといつも一致するとは限りません。
むしろ、よく遭遇する単語や言い回しを覚えていった方が、「何の話をしているのか分からない」といったストレスが減りました。
基本的な語順、文法をおさえる
単語を覚えていくだけでも、カタコトで意思疎通はできたりするものですが、資料を読んだり、メールを書いたりするのであれば、基本的な文法はおさえておくのがよいと思います。
具体的には、HSK4級あるいは中検3級合格を狙える位のレベルは必要でしょう。
文法という基本的な枠組みが自分の中にしっかりできれば、単語数を増やしていくだけで、コミュニケーションの幅はグッと広がると思います。
その意味でも、まずはHSK4級や中検3級取得を目標にしてみるのも良いのではないでしょうか。
・HSK4級のレベルと一発合格するための勉強時間・おすすめテキスト
・HSK3級のレベルと一発合格するための勉強時間・おすすめテキスト
・中国語検定とHSKのレベルや試験内容を徹底比較
チャットやメールを活用しよう
ビジネス中国語というと、商談やプレゼンといった「話すシーン」を思い浮かべがちですが、実は「読み書き」に費やす時間の方が圧倒的に多いです。
会議資料や報告書、契約書や伝票類、メールやチャット等の文字情報を読んだり書いたりする場面の方が多いのです。
私が勤めていた中国企業では、業務連絡はほとんどチャット(企業版Wechat)を使って行われていました。
メールは取引先等の社外の人が宛先に含まれる場合等がほとんどで、中にはメールをチェックしていない人も居るので、「メールを送りました」とチャットで連絡するくらいでした。
ですから、チャットやメールを中国語で書けるようになれれば、かなり仕事を効率良く進めることが出来るようになります。
気軽に使ってみる
チャットやメールの良い所は、「見返すことができる」ということ。文字となって残るので、相手の書いてきた事は辞書を引いてゆっくり理解することもできますし、自分が書く時に真似をすることもできます。
最初は、「好的」という返答だけでも良いので、気軽に使ってみましょう。
自分で文字を打ち込むことで、ピンインを覚えることもできます。
メール等、特に重要な用件は自分で打ってみた後、通訳や日本語の分かる中国人にチェックしてもらうと安心ですね。
チャットでコミュニケーションを続ける
慣れてきたら、積極的にチャットで自分からも発信していくと、かなりの仕事がはかどります。
例えば私は、工場の点検に行った際に何か問題点を見つけた時、それまでは通訳を介して伝えていたので、時間がかかっていました。
でも、例えば写真や動画をとって、「1楼A-8轴附近。请确认一下。(1階のA-8柱付近です。確認してください。)」とメッセージを添えて送るだけで、片付きます。
部長にアポを取りたい時もそうです。自分が聞きたいと思った時に、いつも都合良く通訳が居るわけではありません。
そんな時でも、「您今天下午有空吗? 我有件事跟您商量。(今日の午後お時間ありますか? 相談したい件があります)」位の文が打てれば、仕事が先に進みます。
チャットでは、そんなに長い文を打つことはないので、簡単な連絡、報告、相談はチャットでのメッセージをやり取りするだけで、大体事が足ります。
使える言い回しをストックする
メールも業務連絡的なものもあれば、かしこまった連絡のものもあり、様々です。そして、かしこまった感じのメールは使える言い回しの宝庫とも言えます。
例えば私は「百忙之中(お忙しい中)」という表現は、会議の開催通知で覚えました。
中国人からのメールは、余計な前置き等が少なく、簡潔明瞭で分かりやすかったので、お手本にしたいものをストックしておくと、自分がメールを打つ時に参考になります。
多少文法が間違っていても、文字であれば相手も言いたいことは分かってくれる場合が多いので、「書いて伝える」ことを意識してやってみるだけで、随分と仕事に使えるようになるはずです。
堂々と話そう
チャットやメールで直接やり取りするだけでも、「この人とは直接コミュニケーションができる」と思ってもらえるようになります。それだけでも入ってくる情報量が増えたり、周囲の中国人との距離が縮まることもあります。
でも、やはり「話したい」ですよね。
私も中国駐在時の最終目標は、「毎月開いていた教育会で、通訳を介さずに自分の言葉で直接部下に話をする」というものでした。
そこに至るまでのステップを紹介したいと思います。
①まずは意思表示から
何と言っても最初は「意思表示」、「自分の意見を言う」ことです。もちろん最初は中国語では言えません。通訳の力を借りて、日本語でいいので、自分の意見を述べること。これが中国語を話せることよりも重要だと考えます。
会議の席で「中国語は分からないし……」と、一言も発せずに黙っていると、「意見の無い人」、つまり厳しい言い方をすると、「会議に出席するに値しない人」とみなされる可能性があります。
極端な話、ビジネスで求められるのは、中国語力ではありません。その人が持っている経験であり、スキルであり、人格でしょう。だから、日本語で発言したっていいのです。
と言うと身も蓋もない話になるのですが、まず「同意あるいは不同意(賛成あるいは反対)」位の、意思表示のはじめの一言を中国語で言えるようになるといいですね。
あるいは、通訳も居なくて、内容すら分からない会議という場合もあるかもしれません。そんな時も、「分からない」旨をきちんと伝えましょう。
例えば資料があれば大体の内容が分かる場合もあります。
あるいは、書いて説明してもらうなど、どうしたら自分が理解できるのかを相手に伝えることが大切です。
ビジネスで求められるのは、そういう場面での対応力だと思います。
会議ではホワイトボードを活用しよう
会議が白熱してくると、映しているスライドとは関係の無い話になってきたり、議論の空中戦になったりします。
おまけに、「議論」となると、中国人の方が日本人よりも上手。そのうえ早口でまくし立てられたら、もう何を言っているのか分かりません。
そんな時に使えるのが「ホワイトボード」です。
「つまりこういうこと?」とホワイトボードに図や言葉を書いていくと、相手もそこに書き加えたりして、話の内容が整理されていきます。
ここで発揮されるのが単語力です。自分の仕事に関係する単語を覚えて書けるようにしておくと、役立ちます。
ホワイトボードがなければ、紙でも大丈夫です。要するに空中で交わされている言葉を、紙の上に書き落としていくことです。
もし、自分がある程度主導権を握れる会議であるならば、そんな対応ができますが、そうじゃない場合は、「つまりこういうこと?」等と言い出すこともできませんよね。
そんな場合は、隣に居る中国人に「今、何の話をしているの?」と聞いてみるのも手です。
プレゼンをするなら堂々と
いよいよ、「自分の言葉でプレゼンすることに挑戦しよう」という場合は、何と言っても堂々とやることが大事だと思います。
プレゼンなら、まず自分の言いたいことを原稿に書いて、音読練習をして臨めばいいですよね。
正しい発音で話せれば最高ですが、私は「自信を持って、堂々と話す」方が大事かなと思います。
なぜなら、少しくらい発音が悪くても、スライドを見れば相手は内容が分かるからです。
自信なさげに説明されるより、大きな声ではきはきと説明される方が、聞いている側も気持ちいいと思いませんか?
やると決めたらなら堂々とやりましょう。
最後に
私は6年半ほど中国で仕事をしましたが、商談で訪れた日本人のビジネスマンで、通訳を介さずに中国語だけで話をした人は、ほんの数人でした。しかもほとんどの人が、中国や台湾で子供時代を過ごした人でした。
私自身も中国語を使って仕事をしてはいましたが、金額や納期等、重要な案件を議論する会議では、必ず通訳に同席してもらいました。言い間違いや聞き間違いがあってはならないからです。
中国語が少しできるようになると、自分一人で頑張りたい、挑戦したい気持ちも出てくるものですが、緊急を要する場面や重要な会議等では、中途半端な中国語はかえって迷惑になるということも心の片隅に置いておくとよいのかなと思います。
そのうえで、自分の考えを自分の言葉で伝えていく努力と挑戦を続けていければ良いのではないかと思います。

深谷 百合子(中国語学習コーチ)

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