知っておこう。中国最大のショッピングイベント「ダブルイレブン」2021年はどうなった?
2021-11-29 中国のビジネスや文化・マナー

中国語ウォッチャー・ライター
白圭HAKUKEI

日本のニュースでも時折流れるようになった、毎年11月11日に行われる中国最大のショッピングイベント「ダブルイレブン」。
毎年、多額の買物がされるというけれど、実際にはあまりよく知らない、という人もいるかと思います。
そこで現代中国を知る上では欠かせない「ダブルイレブン」とその2021年の様子を、ざっくりとまとめてみました。
まず知っておこう「ダブルイレブン」とは?
中国で知らなくてはいけない言葉のひとつに「双十一 shuang1 shi2 yi1」という言葉があります。
すなわち「ダブルイレブン(W11)」。毎年11月11日に盛り上がる、インターネットショッピングの祭典。中国でも最大規模の小売イベントです(「2つの11」という意味で「ダブルイレブン」と呼ばれます。)
この2年ほど、日本のニュースやお昼の情報番組などで取り上げられる機会も増えてきており、知っている人も少なくないと思います。
日本のメディアでは「独身の日」などと呼ばれていますが、それはなぜでしょうか?
もともと11月11日は「1」が4つ並ぶことから「独り身」、すなわちパートナーのいない若者が集まってパーティをするというのが、2000年代に入ってからありました。
この時は恋人がいない若者たちの、大学キャンパス内でのイベントだったのです。
そこに目を付けたのが、当時消費者向けインターネットショッピング事業を拡大していたアリババです。
自社のショッピングプラットホーム「淘宝網tao2 bao3 wang3」を使って、「独り身の寂しさをショッピングで晴らさないか?」と呼びかけたのが始まりでした。
こうした経緯から、ダブルイレブンはかつて「光棍節guang1 gun4 jie2」などと呼ばれていました。
「光棍」とは直訳すれば「1本の棒っ切れ」というような意味で、「独身」や恋人のいない「独り身」を指します。
アリババによる11月11日のキャンペーンが始まった2009年当時は、まさに独り身の男女が、寂しい時間をショッピングに費やす時間だったわけです。
それが中国のEC業界の拡大に伴い、11月11日の取引金額も急拡大していきます。
2009年11月11日24時間の取引総額は淘宝網で約5,000万元でしたが、翌2010年には9億元を突破。
主舞台は淘宝網から、その兄弟分サイトにして中国最大規模のECサイト「天猫 tian1mao1(Tmall)」へと代え、2016年には1,000億元の大台に。
2020年は新型コロナウイルスの影響が心配されましたが、4900億元もの売り上げを記録するなど、拡大を続けています。
さらにスタート時には「淘宝網」、「天猫」だけだったプラットホームも。そこに加えてライバルである「京東 jing1dong1(JD.com)」など、ほぼすべてのECプラットホームが参加。
また商品を売るメーカー側も「年間最安値」で売り出すなど、まさに国民的な小売イベントへと成長したのです。
天猫では毎年、11月10日の夜には前夜祭が開催され、11月11日0:00までのカウントダウンが行われるのも恒例となっています。
10周年を迎えた2018年の前夜祭には、日本から渡辺直美も出演。過去最大規模のパーティが繰り広げられました(日本からもネットで見ることができます)。
大学生を中心に起こった独り身パーティが、10年ほどの間に中国最大のショッピングイベントへと姿を変えていったわけです。

ちなみに、イベントが始まったころは11月11日に購入者が殺到するため、早く購入をしなくてはならず、0:00ぴったりの購入を待つ消費者も数多くいました。
しかし、「独身の日」という意味合いが薄れ、「ショッピングイベント」の意味合いが濃くなるつれ、「予熱期(予約期)」といわれるマーケティング期間が設けられるようになり、実際には10月20日から商品の予約が始まるのがルールとなっています。
では、2021年のダブルイレブンはどうだった?
そんな毎年盛り上がるダブルイレブンでしたが、今年はちょっと様子が異なりました。
毎年、11月11日午前0:00から微博の公式アカウントなどを通じて「現在の売上〇〇〇億元!」といった「戦報 zhan4 bao3」が発せられたり、「君はもう買ったか?」といった参加を促すメッセージが多く発せられるのですが、今年はそれらは全く無く、中国のメディアや筆者を含めた中国ウォッチャーたちを戸惑わせました。
前夜祭こそ行われたものの、現地時間の23:00には終了し、カウントダウンも無し。メディアなどでは「戦況報告もない、静か過ぎるダブルイレブン」といった記事が流れるほどでした。
その背景にあるのは、中国政府が「浪費や衝動的消費」を戒めるメッセージを発していたこと、またECプラットホームが巨額の富を得ていることなどに対する規制など、いろいろな要素が囁かれています。
特に前者においては、「ダブルイレブンだから買わないと」という心理が働き、大量の消費をしてしまった消費者たちが多く現れました。
そうした人たちは、腕を切り落とされない限り買い物が止められないという意味を込めて「剁手党 duo4 shou3 dang3」と呼ばれたり、さらにはお金を使いすぎて食べ物も変えないという例えとして「吃土 chi1 tu3」などといった言葉が生まれたりもしました。
そうした衝動的な消費ではなく「理性的な消費を」と、各地方政府が呼びかけを行った形跡も見られ、これら政府の意向に天猫の運営元であるアリババが配慮したのではと考えられています。
とはいえお祭りはお祭り。終わってみれば最大のECサイト天猫は取引総額「5403億元」、日本円にして9兆円以上売り上げるという過去最高の成果を修めています。

ダブルイレブンが中国「エコ消費」のターニングポイントに?
今年のダブルイレブン、例年と違ったのはこうした「盛り上がり」が無かったことだけではありません。新たな消費のトレンドもメッセージとして発信されたことです。
それは「ローカーボン」。環境に配慮した消費をしようと呼びかけたのです。
特に前夜祭には、「この自然を残すのは子孫に対する最大のギフトだ」、「環境の事を考えるのが大国の国民としての務めだ」といったメッセージが放送されたばかりか、中国で現在人気を集めるアイドルや俳優たちが、それぞれ環境への配慮、資源の節約、ローカーボン消費を訴えるメッセージを送りました。
実は中国は「2060年までに二酸化炭素排出を実質ゼロに」というカーボンニュートラル社会構築計画を発表。それに向けて政府自体が動き出しているのです。
これまでは経済発展の中、日本でも現れた大量消費時代に突入していました。いずれ機会があれば説明したいと思いますが、元来が「より多くのものを集める」というのが豊かさ、幸せの基準であるというのが、中国の伝統的な価値観でした。
良くも悪くもダイナミックな国なのです。
そうした消費においては、かつて日本の80年代がそうであったように、環境への影響はあまり顧みられてきませんでした。
しかし、中国は政府としても、そして国民的なイベントにおいても「ムダを省き、よりエコロジーな消費を」と呼びかけ始めたのです。
強大な経済力と消費力を持つ中国。その国民がエコロジー消費に目覚めると、地球が抱える環境問題も解決に向けて大きな一歩を踏み出すことになるかもしれません。

白圭 HAKUKEI

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